Two of us 3.5

     【迦陵頻伽・真】

《ヴェクタス・アヴローンへの、とあるインタビューにて》

「アヴローンさん。これまでさんざん聞かれてきたこととは思いますが、そろそろ教えていただけませんか? “カラヴィンカ"が誰なのか。以前お付き合いのあった歌姫、アデラ・ハデルのことではないかというのが、もっぱらの噂ですが」

「……私は恐れ多くも"仏”、地球の神にまつわる逸話を詩作に利用したが、理解が足りないとしても、信仰への敬意は欠いていないつもりだ。であれば、“神の言葉"そのものである存在をそのあたりの誰かに投影することなどないと、何故分からないかね? 世の中には、あれは自分のことだと口にする者もいるようだが、己は"神の言葉そのものである"と? もし"カラヴィンカ"がこの世にいるとしても、そのような不遜な者のことでは断じてないのは、言うまでもない」


「ただいま。……リデアン? おかえりなさいは、言ってくれないのか? ……どうした?」 「……昨日の」 「ああ?」 「インタビューですが」 「ああ、あれか。聞いたのか」 「………………」

 『そのあたりの誰かに投影することはない』。  と、ヴェクタスは言った。  「現実の誰かに」でもなく「生身の存在に」でもない。  あくまでも、「そのあたりの誰かに」。

「もっと聞かせてくれ。私には、この世で一番美しい聲だ」  時折、睦言として囁く言葉。  そしてそんなとき、 「私の」  で途切れて後は飲み込まれ、続きを一度として聞いたことのない言葉。

 森に放った美しい声の鳥たちに、あの詩のことを思い出し、“カラヴィンカ"と名付けてはどうかと言ったとき、 「天上の鳥は、ただ一羽に決まっているだろう。彼等は違う」  とすぐさま言ったこと。

「………………」  言葉のないリデアンに、俯いて微かに震えている恋人に、傍に寄り跪き、その手を取ったヴェクタスが囁く。 「私のカラヴィンカ。君以外に誰か、私が讃える相手がいるとでも? 気付くのが遅すぎるよ」  恥ずかしすぎても涙が出るのだと、リデアンはそのとき初めて知った。