With You 5

ヴェクタスには透析器などは操作できても、本格的に検診はできないため、定期的にユーリシアの病院に連れて行く。 病院どころかコロニーそのものの持ち主というVIPなので、待遇も特別。とはいえ検査は一般の総合検診とそう変わらず進むため、待ち時間は発生する。 アンダーソンの声を聞くリデアン。 まさかと思うが、間違いがない。 そしてアンダーソンもリデアンを見つける。

アンダーソンは、隣の星系で異端ゲスとの小規模戦闘に巻き込まれた部下の見舞いに来ていた。 今やゲスの大半は良き隣人となったが、独自の接続を保って相変わらず敵対的な者も残っている。リーパーによる強化の影響も強く、交戦の結果、神経系に以上が発生した者は、念の為"専門機関"も置かれているここに移送されていた。 ヴェクタスがリデアンのために用意したものが、結果的にアンダーソンをここに招いた形。

アンダーソンとシェパードは、リーパーを撤退させた後、無事にクルーシブルを離脱した。満身創痍ではあったが無事だった。

ヴェクタスは、アンダーソンを知っている。リデアンを苦しめた男の一人として認識している。 彼が高潔で誠実な立派な軍人であることは知っている。 記録にある"事実"以外には、リデアンにとって唯一と言っていい友人だったことくらいしか分からなかったが、リデアン自身に話を聞いて思ったのが、立派な好人物だからこそ、リデアンは彼に相応しくあろうとして、弱みを見せることなどできなかった、ということ。

厳格な父親、勝手な期待を向け英雄視する群衆、そのせいでリデアンは"良き軍人"にならねばならなかった。そうある以外許されなかった。 だが、そういった他人の勝手な呪縛、期待は、その気にさえなれば捨てられる。知ったことかと言える。 だが自分自身でかけた誓いは破れない。立派な軍人である良き友は、リデアンに彼自ら、友として相応しくあらねばという、強い強い枷を付けさせた。 ヴェクタスにはそうとしか思えない。

だがリデアンがあくまでも彼を友人だと言い、思いがけない再会に声が弾むなら、ヴェクタスにそれを阻むことはできない。 二人で話をさせてやろうと去ろうとすると、リデアンに止められる。そして、 「知っているかもしれないが、ヴェクタス・アヴローン。(ヴェクタスの世間的な肩書を挿入) 私の、長年に渡る支援者だ」 と紹介し、ノルマンディに無理やりリデアンの"部屋"をねじ込んだりしたのも彼だと教える。 「そして今は、私の、……パートナーでもある」 と続ける。 その言葉に仰天するアンダーソンとヴェクタス。

アンダーソンは、あれこれ詮索せず、ともかく無事で良かった、元気なんだな、なんとかやってるんだなと喜ぶ。照れくさくて言葉にはしないが「幸せなんだよな?」という思いが眼差しに溢れてもいる。 ヴェクタスは、まさかそう紹介されるとは思わなかったが、大した機転だと感心する。変に過去の関係を隠すより、そういうことにしてしまったほうがいい。 だからリデアンのついた"嘘"に乗ることにする。

何度も手を貸してきた。星より高い買い物をしたこともある。たぶんそのときからもう愛していた。だがそんな自分が自分で信じられなくて、ただの取引相手、支援者であってきた。だが彼を失いそうになったとき、我慢ならなくなった。だから、どんな手を使ってでも呼び戻し、傍に置き、思いを伝えたーーー。 (……おかしいな。嘘に乗ったはずなのに、嘘が一つもない) 自分のこの20年の本心に、嘘を通して、それが嘘ではないことで、気付くヴェクタス。

また会おう、連絡する。体を大事にな。私にできることがあるならなんでも言ってくれ。アヴローンさん。どうか彼を頼む。 そう言って本来の目的のため立ち去るアンダーソンに、ヴェクタスはもう不愉快は感じない。(不愉快だったのはほぼ嫉妬のため。アンダーソンに対する評は間違ってはいないが、怒りを正当化するためのこじつけでもある) 「いいのか。あんなことを言って」 というヴェクタスに、手探りして、手を取るリデアン。それが答え。