With You 5
【嘘のない嘘】
月に一度、リデアンには定期検診が義務付けられている。コロニー・ユーリシアの総合医療センターでの、三日間の検査入院だ。 日常の処置についてはヴェクタスが担っている。透析も神経調整も電位調整も、機器の点検も消耗品の交換も、手順として確立されたものであればすべてだ。だがそれらはあくまでも操作であって、診断ではない。数値の異常を検知することはできても、その意味を読み解き、まだ形にならない変調の芽を見つけ出すのは、専門家の領分である。 多臓器の不全と代替は、負の連鎖の火種を常に抱えている。だから月に一度、何をおいてもヴェクタスは、リデアンを病院へ連れて行く。
病院どころか、このコロニーそのものの持ち主だ。当然、待遇は特別だった。 一般病棟からはやや離れた専用の検査病棟。専属のスタッフ。リーパー由来の機構を抱えた体を診る以上、検査は"専門機関"に隣接する、関係者以外は立ち入れない区画で行われる。守秘のためにも、これ以上の環境はない。 とはいえ、検査そのものは一般の総合検診と大差なく進む。機器には所要時間があり、検体には解析の順番があり、結果が出なければ次の項目も決まらない。金を積んだところで、培養や造影が速く仕上がるわけではないのだ。 よって、待ち時間というものはどうしても発生する。銀河でも指折りの富豪が、庶民と変わらず順番を待つ。ヴェクタスはその事実を、意外に嫌いではなかった。金で縮まない時間は、金で計らなくていい時間でもある。 それに、悪い時間でもないのだ。二年前、この病棟の白い一室で祈るしかなかった日々を思えば、「先月と変わりありませんね」というカエラの一言を待つだけの三日間など、安穏そのものと言っていい。
二日目の、昼下がりだった。 午前の検査と、カエラとの短い面談は済んでいた。数値はいくつか上振れも下振れもあったが、いずれも想定の範囲。「強いて言うなら」と彼女は付け加えた。「最近のトライオスさんは、声の調子がとても良い。医師としては、それが一番の朗報です」と。 次の検査までは一時間半ほど。二人は中庭に面したラウンジにいた。リデアンのためにこのコロニーを再整備したとき、他の患者にも必要だろうと造らせた庭だ。ガラス越しに、手入れされた木々と、ゆるやかな水音が届く。 検査のため義肢は外してあり、リデアンはメディチェアにかけている。ヴェクタスはその傍らで書類を片付けながら、合間に他愛のない話をしていた。帰ったら何を聞くか。仕事の資料か、それとも読みかけの小説の続きか。 それから、以前から約束したままになっている、マイセルの店のこと。 「予約は取った。個室だ。彼のことだから、君のための皿を三日は試作するだろうな」 「三日、ですか」 「今から素材の相談をされているよ。……ああ、それと。試作の判定には、うるさい審査員が揃って付くそうだ。全員、君のよく知る顔ぶれだよ」 「それは……検査より緊張しますね」 返ってくるのは相変わらず控えめな相槌ばかりだが、その端々に、以前はなかった柔らかさがある。いつもの、他愛のない時間だった。
と、リデアンの気配が変わった。 顔がわずかに上がり、頬殻が固くなる。聴覚に全神経を割いたのが、傍らのヴェクタスには手に取るように分かった。 「どうした?」 「……声が」 まさか、と続いた呟きは、ほとんど吐息だった。だが、間違いがない、とも。鋭敏になったリデアンの耳は、ヴェクタスにはまだ届かないものを既に捉えている。 やがてヴェクタスにも聞こえてきた。廊下の先、ガラスの仕切りの向こうを、院長たちに囲まれて歩いてくる一団の話し声。その中心にいるのはヒューマンの男だった。濃い褐色の肌に、白いものの混じった短い髪。年齢を感じさせない、軍人のまっすぐな背筋。 見間違えようもなかった。 デイヴィッド・アンダーソン。SSVノルマンディSR-1の初代艦長にして、現在は四人目のシタデル評議員。先だってシタデルの経済会議でも、遠目にその姿を見ている。 そして―――リデアンが、ただ一人の友人だと語った男。 胸の奥で何かが薄暗く頭をもたげるのを、ヴェクタスは自覚した。だが、今はそれどころではなかった。
視線を感じたのか、それとも、中庭に降り注ぐ陽光の明るさが目についたのか。 談笑していたアンダーソンの顔がこちらを向き―――止まった。 二度、三度、瞬きをする。院長に短く断って、一人でこちらへ歩いてくる。その歩調は、近づくにつれて速くなった。 「……まさか」 ラウンジの入口で、彼は立ち尽くした。 「リデアンか? リデアン・トライオス、なのか?」 「お久しぶりです、アンダーソン」 アンダーソンは言葉を失った。 喜びに顔が輝く、というのはこういうことを言うのだろう。だがその輝きは声にならず、伸ばしかけた手は、触れていいものかどうか分からないというように宙で止まる。目は、右腕のない肩にもメディチェアにも一瞬だけ触れて、すぐに顔へと戻った。その一瞬に走った痛みを、彼は綺麗に飲み込んでみせた。 リデアンが左手を差し出す。アンダーソンは両手でそれを包み、強く、強く握った。 「生きていたのか」 絞り出した声は、掠れていた。
「残骸の記録は、追えるだけ追った。だが遺体の回収記録が、どこを探してもなかった。……心のどこかでは、もしやとは思っていたが、だが、まさか本当に……」 「黙っていて、すみませんでした。私は……」 「いや。いい。何も言わなくていい」 詫びようとするのを、アンダーソンは首を振って遮った。 「“軍神"などという名から自由になるには、これくらい必要なんだろう」 それから彼は、目元を拭う仕草を隠しもせずに笑った。 「歳を取ると、涙腺が緩んでいかんな」
どうぞ、とヴェクタスが向かいの椅子を勧めると、アンダーソンは礼を言って腰を下ろした。座ってなお、その目はリデアンから離れない。何年も探していたものを、瞬きの間に見失うまいとするような目だった。 「不自由は……いや、愚問だな。すまん」 「“退屈は猫をも殺す”、と言うでしょう」 と、リデアンが言った。 「あれは本当でした。危ないところでしたが、……今のところ、猫は無事です」 一拍おいて、アンダーソンが噴き出した。 「君がそういうことを言うようになるとはな」
「しかし、貴方こそ何故ここに。シタデルからでは、随分と遠いでしょう」 リデアンが尋ねると、アンダーソンは、公務だと答えた。 「ここの研究機関の視察と……それから、見舞いだ。かつての部下が、近くの星系で異端ゲスの残党との小競り合いに巻き込まれてな」 今やゲスの大半は良き隣人となった。だが、独自の接続を保ったまま、相変わらず敵対を続ける者たちも残っている。彼等にはリーパーによる強化の痕が色濃い。 「命に別状はなかったが、交戦の後から神経系に異常が出た。原因の分からんものは、専門機関のあるここへ運ぶのが一番確実だという判断だ。それで、視察のついでと言っては本人に悪いが、顔を見に来た」 「容態は」 「ここの医師団いわく、快方に向かっている。何が起きたかも、おおよそ見当がついたそうだ。他の星の病院なら、原因不明のまま匙を投げられていたかもしれん」 良い施設だとアンダーソンは言い、それから改めてラウンジを見回した。評議員としての視察の目と、旧知の無事を確かめる目が、そこで半々に混じっていた。 なるほど、とヴェクタスは内心で嘆息する。 リーパー技術の研究機関も、それを扱える医療も、元はと言えばすべて、リデアンのために揃えたものだ。それが巡り巡って、この男をここへ招いた。皮肉と呼ぶべきか、必然と呼ぶべきか。
「シェパード少佐は……いえ、皆さんは、ご無事でしたか。私はあの後のことを、報道の範囲でしか知りません」 「今は中佐だ。相変わらず、厄介ごとが起こるたびに、銀河の端から端まで走り回されてる」 アンダーソンは笑い、それから少しだけ声を落とした。 「クルーシブルからは、二人とも無事に脱出した。命からがらといった有り様ではあったがな。それで聞いた朗報もあれば、訃報もあった。君について知ったのは、だいぶたってからだったよ」 クルーシブルを守るため、自らを盾にした戦闘艦があったことはすぐに知らされた。だが、そこに乗っていたのが誰かまで分かっている者は、限られていたせいだ。大破した艦は回収されたが、遺体は発見されなかった。コクピットは青い血にまみれて酷い状態で、到底自力で動けたとは思えないが、なんらかのはずみで宇宙空間に放り出された可能性もある。 「そうなれば、いくら太陽系が小さくなったとはいえ、な。探すすべなどない。だから私は……」 そこまで言って生まれた短い沈黙を、彼は自分で断ち切った。 「案ずるな。このことは誰にも言わん。シェパードにもだ。……いつか、君の口から言ってやれる日が来ればいいとは思うがね」
二人のやりとりを、ヴェクタスは半歩引いた位置で聞いていた。 デイヴィッド・アンダーソン。その名を知ったのは、“七回目の取引"のときだ。ノヴェリアの封鎖を解かせるにあたって、リデアンが対価を払ってまで手助けしようとする者たちのことは、当然すべて調べた。SSVノルマンディSR-1の初代艦長。調べのつく範囲では、それだけの男だった。 記録にある"事実"のほかにヴェクタスが知っていたのは、この男がリデアンにとって唯一と言っていい友人だった、ということくらいだ。高潔で誠実な、立派な軍人。経歴をどれだけ洗っても、その評は覆らなかった。 だが、リデアン自身の口から思い出話を聞いて、ヴェクタスが思ったことは別にある。 ―――立派な好人物であったからこそ、リデアンは彼に相応しくあろうとして、弱みを見せることができなかったのではないか。 厳格な父親。勝手な期待を寄せ、英雄と祭り上げる群衆。それらのせいでリデアンは"良き軍人"でなければならなかった。そうある以外を許されなかった。 だが、他人が勝手にかけた呪縛など、その気にさえなれば捨てられる。知ったことかと言い放てば済む。 破れないのは、自分自身でかけた誓いだ。 立派な軍人である、良き友。その存在はリデアンに、彼自らの手で、“友として相応しくあらねばならない"という、強い強い枷を付けさせた。誰よりも近くにいながら、誰よりも弱音を吐けない相手。 ヴェクタスには、そうとしか思えない。 ―――思えないが。 リデアンがあくまでも彼を友人だと言い、そして現に今、思いがけない再会に声を弾ませているのなら、ヴェクタスにそれを阻むことなどできはしない。こんなふうに弾む声を聞くのは、初めてだった。
だから、席を外すことにした。 「積もる話もあるだろう。私は院長のところにでも顔を出してくるよ」 腰を上げかけたその袖を、掴まれた。 「ヴェクタス」 リデアンの左手だった。 そして、ヴェクタスが座り直すのを待ってから、リデアンは居住まいを正した。 「アンダーソン。紹介させてください。……知っているかもしれませんが、ヴェクタス・アヴローン。このコロニー・ユーリシアの持ち主で、私の、長年に渡る支援者です。大戦のとき、ノルマンディーに私の"部屋"を無理やりねじ込んだのも、彼です」 「! “匿名の大富豪”、そうか、貴方だったのか」 アンダーソンが目を丸くした。連合軍の最新鋭艦であるノルマンディを、もう一隻作れるほどの資金投下だ。ノルマンディーと縁の深いアンダーソンであれば、当然知っているだろう。だがその謎の人物が誰かは、ようやく今知ったようだ。
大したことではない、とヴェクタスは言おうとした。“英雄たち"に存分に戦ってもらうためだ、その中の一人が特殊な処置室を要しているなら、作らないほうがおかしい、と。 だがヴェクタスが口を開く前に、リデアンは続けた。 「そして今は私の」 そこで一瞬、言葉が途切れる。 だがすぐに、 「“パートナー"です」 と続いた。
「パートナー?」 その意味は広い、アンダーソンも具体的なイメージにつながらず、疑問に思ったようで語尾が上がる。 死の淵からの、再生のパートナー。 あるいは、この不自由な体で生きていくための、パートナー。 ヴェクタスもまた、リデアンが口にした言葉の真意が分からず彼を見た。 リデアンは珍しく迷うように口だけを少し動かした。 それを一度しっかりと結ぶと、やがて言った。 「介護が必要なのは事実ですが、それだけではなくて……、共に暮らしています。今の私にとっては、かけがえのない、特別な"パートナー"です」
少しだけアクセントを強めたその言い方に、言葉の意味を察してアンダーソンが固まった。 目が、リデアンとヴェクタスの間を二往復する。仰天している。当然だろう。 だが驚いたのは、ヴェクタスも同じだった。 まさかリデアンが自分を、そんなふうに紹介するとは思ってもみなかった。 同時に、大した機転だと感心もしていた。 変に隠すよりずっといい。20年に渡る"取引"の内実も、今の―――肉体の結びつきを含む関係も、詮索の余地ごと、「恋人である」というたった一枚の看板がすべて覆ってしまう。真実を切り分けて売り渋るより、大きな一つの物語を掲げるほうが、隠しごとというものは上手くいくのだ。 それに、下世話な好奇というものがどれほど容赦なく大切なものを汚すか、ヴェクタスはよく知っている。中途半端な沈黙は憶測を呼ぶだけだが、堂々と掲げられた物語は、それ自体が盾になる。相手がこの実直な男であればなおのこと、これ以上の答えはなかった。
ならば、その嘘に乗ろう。 “銀蛇"と呼ばれ、人からどう見られるかを常に意識し、演じ続けてきた男である。造作もないことだった。
ヴェクタスはリデアンの肩に軽く手を置いて、極上の笑みを浮かべた。 「親友に嘘はつきたくない、というわけか、リデアン? 彼の言うとおりですよ、評議員」 20年になります。彼が困難を抱えて訪ねてくるたび、何度も手を貸してきました。星より高くつく買い物をしたことも、一度や二度ではありません。 「思えばたぶん、最初のときから惹かれていたのでしょう。だがずっと、“お気に入り"だと思っていた」 傍に置いたら倦むかもしれない。だったらただの取引相手、支援者として、通い猫でも愛でるつもりでいるほうがいい。 「それなのに、彼を失いかけたとき、我慢がならなくなった。だからどんな手を使ってでも呼び戻し、傍に置いて、やっと自覚しました。先に言わずに、申し訳ない。貴方の友人は、今は、私の最愛の恋人というわけです」
よどみなく語りながら、ふと、ヴェクタスは気付いた。 (……おかしいな) 嘘に乗ったはずだった。役柄に合わせて、即興の台本を口にしているだけのはずだった。 なのに嘘が、一つもない。 誇張も、脚色も、どこにもない。選んだ言葉のどれひとつとして、事実と違っていない。 20年。 巨大な相手の懐へ、たった一人で飛び込んできた若者。3000の命のために、自分のすべてを差し出した、毅然とした、可憐な姿。あのとき目と記憶に焼き付けたものを、ヴェクタスは一度として手放したことがない。 訪れるたびに、価値だと言った。手放せない理由を、希少性に換えた。戦地へ送り出すときは、疾駆する獣を檻に入れる趣味はないのだと嘯いた。物言わぬ体の傍らで、祈りなど持たないはずの自分が祈っていた、あの日々でさえそれが何故かを考えることはなく、やがては罪悪感と贖罪に塗り潰された。 その間ずっと胸の底にあって、名付けずにきたもの。 取引だ、対価だ、鑑賞だ愛玩だ、そして償いだと、呼び替え続けてきたもの。 それが何であったのか―――。
アンダーソンは、あれこれ詮索しなかった。 いつからだとも、どういう経緯だとも、そもそもあんたたちは、とも聞かなかった。ただ何度か、深く頷いて、 「……そうか」 と言った。 「ともかく、無事で良かった。元気そうで、良かった。なんとか、やってるんだな」 言葉はそれだけだ。だがリデアンへ向けられた眼差しには、口にされなかった問いが、“幸せなんだな?“が、溢れんばかりに滲んでいた。
やがて、随行の秘書官が遠慮がちに姿を見せた。視察の予定が詰まっているのだろう。 アンダーソンは立ち上がり、一度何かを言いかけて、やめた。おそらくは、連絡先を、と言いたかったのではないか。 だがアンダーソンはリデアンの肩に手を置くと、 「体を大事にな。無理はせず、せっかくできたパートナーだ。十分甘えさせてもらえ」 少し悪戯げな声でそう言った。リデアンも小さく笑い、見えない目を顔ごとアンダーソンのほうへと向ける。 「そうします。ですから、貴方もどうかご自愛ください」 「もういい年だしな。そこはぼちぼち上手くやるよ」 快活に明るい声で笑ってから、アンダーソンはヴェクタスに手を差し出した。 取った手は、厚く堅い。軍人の手だ。そこにこもる力が、百の言葉よりも雄弁に伝わってくる。 ヴェクタスがゆっくりと頷くと、アンダーソンもまた一つ頷いて応えた。
去っていく広い背中を、ヴェクタスは見送る。 かつてこの男の名を見聞きするたび、胸の奥に兆していた薄暗い不愉快は、もうどこにもなかった。 (……要するに、ほぼ嫉妬だったわけだ) 枷だなんだという評は、間違ってはいないと今でも思う。だが同時にあれは、この男を拒絶したい気持ちを正当化するための、こじつけでもあった。 だから今は、―――リデアンが自分をアンダーソンに、パートナーだと、恋人なのだと伝えた今は、信頼のできる良い男じゃないかと、思えてしまう。 (我ながら、なかなか可愛げのあることだ) 傍らのリデアンは、遠ざかる足音へと僅かに顔を向けたまま、じっとしていた。あの鋭敏な耳は、廊下を曲がり、扉が閉じ、その音が完全に途切れるまでを聞き届けたのだろう。やがて、ふ、と小さく息をついた横顔は、静かで、そして穏やかだった。
ラウンジには静けさが戻っていた。中庭の水音が聞こえる。次の検査までは、まだ少し時間があるようだ。 「いいのか。あんなことを言って」 尋ねたのは、責めるためでも、撤回させるためでもない。ただ、聞かずにはいられなかっただけだ。 リデアンは答えなかった。 その代わり、左手が少しだけ手探りをして、ヴェクタスの手を取った。 握るというより、確かめるように、少しだけ、躊躇うように。 「貴方こそ、否定しなくて良かったのですか」 「するわけないだろう」 だからヴェクタスから強く握り返す。 それにようやくリデアンも、同じ強さで指をからめる。
長い遠回りをした。 もっと早くに、君を愛していると言っていれば、違う未来があったのかもしれない。 リデアンが傷つき続けることも、なかったのかもしれない。 だが、今更言っても仕方のないことだ。 なにより、それをまた罪や後悔として背負うことなど、リデアンが望まないだろう。 過去にどんな苦難があり、どれほどの罪があったとしても、それらすべて含めて引っくるめて、言ってくれたのだ。 パートナーだ、と。
言葉は、まだどちらからもない。 だが急ぐ必要も、焦る理由も、何もない。 これからはいくらでも、こうして二人の時間があるのだから。 次の検査を告げるアナウンスが響くまで、二人はそのまま、中庭の水音を聞いていた。